求める人財に届く「採用コンセプト」と「採用ツール」設計:第2部【セミナーレポート】

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並木

B!

5月28日、株式会社ディスコ主催のオンラインセミナー、『求める人財に届く「採用コンセプト」と「採用ツール」設計セミナー』が開催されました。本セミナーは2部構成で、第1部では「自社にとって最高の人財を採用するために」というタイトルで、株式会社ソーシャルデザイニング研究所の櫻井氏にご登壇いただき、第2部では「効果的な採用ツールの設計方法」というタイトルで、株式会社ディスコより山内が登壇いたしました。人事コンサルタントの目線から、また採用広報ツールのクリエイティブディレクターの目線から、自社にとっての優秀な人財を獲得するための戦略構築方法について解説していきます。本記事では第2部の内容を紹介します。

【講師】
株式会社ディスコ 企画クリエイティブ部
山内 孝将(ヤマウチ タカマサ)

2005年入社以来、主に企業の採用広報ツール(WEBサイト、パンフレット、映像、広告媒体、インターンシップ等)、様々なクリエイティブツールの制作を担当している。


効果的な採用ツールの設計方法

第2部では「効果的な採用ツールの設計方法」について、下記のアジェンダに沿って説明していきます。

目次

  1. 採用ツールの設計
  2. オンラインでの効果的な採用ツールとは

採用ツールの設計

山内は、「採用ツールは採用活動を効果的に行うための武器だ」と主張します。学生に対して採用コンセプトを伝えていくことはもちろん、各企業の採用課題を解決するひとつの手法として採用ツールが存在するのです。業界規模や知名度などによって、企業の採用課題は様々です。そのため、他の会社で成功した事例が必ずしも自社で通用するわけではありません。
ではまず、採用コンセプトを効果的に伝える上で、どのように採用ツールを設計していけば良いのでしょうか?

山内はまず設定すべきポイントとして、「誰に、何を、どう伝えるか」、要するに「ターゲットに、自社の魅力を、どのツール・表現方法で伝えるか」が重要だと主張します。これを考えるに当たって、下記の3つの観点から情報の収集、整理をしていきます。

自社の魅力整理

まず、自社の魅力分類を下記4つのカテゴリで考えていきます。

  1. ブランド・理念戦略の魅力
  2. 事業・仕事の魅力
  3. 人・風土の魅力
  4. 制度・環境の魅力

ブランド・理念戦略の魅力:

成長性、安定性、知名度、会社規模、ビジネスモデル、将来性、明確な理念、経営計画
→いわゆる「企業力」に当たる部分です。 製品、サービス、ビジネスモデル、戦略、そこから導かれる将来性、安定性、成長性、また、自社の「思想」「理念」的な部分もここに含まれます。

事業・仕事の魅力:

領域の広がり、社会貢献、影響力、商品・サービス力、裁量、活動内容、獲得スキル、グローバル
→事業そのものの魅力であったり、事業が社会に与える影響力、影響範囲、業界内でのポジション、任される仕事範囲といった部分にあたります。

人・風土の魅力:

アットホーム、男女平等、ワークライフバランス、競争重視、採用姿勢、若手活躍
→いわゆる「社風」にあたる部分です。その会社が有する価値観など、ハードな面だけでなくソフトな面も伝えていくことが大切です。

制度・環境の魅力:

福利厚生、勤務地、開発環境、オフィス環境、実力主義、給与、就業実態、研修制度
→働きやすい環境、成長できる環境や制度、給与、就業の実態など、いわゆる「待遇面」にあたります。

これら4つの魅力因子を書き出し、表を作成することで、採用ツール設計上の基盤となる情報の整理に役立ちます。ま た、作成した表を採用に関わる社員に共有することで、全ての学生に整合性を持って自社の魅力を伝えることができます。

学生が知りたい情報

では、自社の魅力の中でも、学生が今、特に知りたい情報は何なのでしょうか?
ここからは弊社の学生調査データを用いて解説していきます。
まずこちらは、学生が就職先企業を選ぶ際に重視する点についての調査データです。「将来性がある」を重視する学生が一番多く、次に「給与・待遇が良い」「福利厚生が充実している」といった制度面の項目、続いて「社会貢献度が高い」「職場の雰囲気が良い」といった項目が上位にあがっています。

続いて、学生が就職決定企業を決めた上での理由についての調査データです。
こちらでは、「社会貢献度の高さ」が一番多く選ばれている他、「有名企業である」「業界順位が高い」など、企業ブランドに関する項目が上位にあがっています。

ここまでは、学生が就職先企業を選ぶ際の「軸」は何なのかについてのデータでした。
それでは、学生がこれらの「軸」を決めるにあたり、企業研究を行う上で知りたい情報は何なのでしょうか。

学生が企業研究を行う上で知りたい情報について、こちらのデータを見てみると、「実際の仕事内容」を知りたいと答える学生が一番多く、次に「社風」「給与水準・平均年収」「求める人財像」「福利厚生制度」、そして「他社と比べた強み・弱み」と続いています。
学生が企業研究をしていくにあたって、企業側から網羅的な情報を提供することは大切です。しかし、一番重要なのは、学生が知りたいと思っている情報をきちんと提供できているか、という部分になります。特に、福利厚生などの制度面以外の項目に関してはただ説明するだけではなく、自社の魅力と共にしっかりと伝えていき、内的要因、いわゆる本来の「働く目的意識」の醸成を図ることが求められます。

こちらは参考データになりますが、就職活動中の学生に採用ホームページでよく閲覧したコンテンツについて、就職活動のフェーズごとに回答してもらったデータです。
フェーズごとに見ていくと、志望理由を語らなければいけない「エントリーシートの作成時や面接前」には「企業理念、トップメッセージ」が多くみられており、内定承諾を判断する際には「待遇面やキャリアパス、制度面」に関するコンテンツが多く閲覧されていることがわかります。

これらの情報をもとに、「学生が知りたい情報」に対応して、自社の魅力として伝えるべき部分は何なのかを、検討していく必要があります。 例えば、ターゲット学生の知りたいことが「やりたいことはあるか」だった場合、「自社が挑戦し創造する価値観」について魅力を訴求すべきですし、「将来性があるか」だった場合、「現在の事業基盤や今後のビジョン」について説明することが求められます。

競合の打ち出し整理

多くの学生は、はじめからこの会社で働きたいという明確な意思は持っておらず、就職活動の過程を通して徐々に会社で
働くイメージを持ちはじめます。では、自社をしっかりと印象に残し選んでもらうためには、どのように他社との違いや
自社で働くことの優位性を打ち出していけば良いのでしょうか?

始めに、採用サイトや就職情報サイトから競合がどのようなことを発信しているのか、「目指す姿」「仕事内容」「組織と人」の3つに分類して表にまとめます。競合の情報の打ち出し方を収集して整理していくことによって、自社を差別化する上でのポイントを掴むことが重要です。

自社を差別化する上でのポイントを把握したら、次にコミュニケーションマップを作成します。
コミュニケーションマップをつくることで、いつ、どこで、何のために、どのような情報を発信すべきかを明確にすることが可能になります。

コミュニケーションマップを作成するにはまず、「認知拡大」「興味喚起」「理解促進」「動機形成」「ギャップ解消」という5つのフェーズごとに、適応する採用ツールをわけていきます。その下に、各採用ツールを使用することで期待で きる学生の態度変容を整理していきます。例えば、認知拡大から興味喚起のフェーズでは「学生の興味関心を惹き、思い込みや誤解を払拭させていきたい」など、採用施策によって期待される効果を記入します。

次に、先述したデータに基づいた「学生の知りたい情報」をテーマごとに時系列に並べていきます。例えば認知拡大から理解促進のフェーズでは、就職先企業を選ぶ軸として多くの学生が回答していた会社軸(成長性、将来性、独自性)、社会貢献軸(社会や人の役に立つ仕事)等のテーマが当てはまります。

次に、先ほど整理した自社の魅力をマップ上に落とし込んでいきます。これは、どのタイミングで、どの魅力要因を、どの程度の濃度で伝えるのかを戦略的に策定するためです。これらの作業をすることで、自社が取るべき採用パターンが浮かび上がってきます。

コンセプト軸ができ上がったら、最後にゴールを設定します。学生の就職活動フェーズを考慮した上で施策の目的を設定することで、より具体的な採用ツール戦略を考えていくことができます。
効果的な採用ツールを設計するためには、ツールごとの役割や使い方を明確にして検討していくことが大切です。そのためにはまず、求める人物像、採用コンセプトを軸にコミュニケーションプランを立案します。そして自社の魅力(情報)を情報発信チャネルごとに設計した上で、採用ツールを当てはめていきます。採用ツールは「点」ではなく「線」で考えることが重要なのです。

オンラインで効果的な採用ツール

コロナ禍の影響で今や当たり前になった「オンライン採用」ですが、オンラインで効果的な採用ツールとは何なのでしょうか?

企業の主な採用課題

山内は、3月頃までは順調でも、5月頃になってから採用課題が増えた企業が多いと主張します。
まず、3月頃まで採用活動が順調だった企業に共通する部分として、オンライン対応をしていた、早期から採用活動を実施していた、早期から選考を開始していた、対面機会を設けていた、という特徴があげられます。特に中堅、中小企業に関しては、対面で学生と接する機会を効果的に使用している企業が多く、これらの施策が順調な母集団形成や、選考会への接続率アップに繋がったと考えられます。

しかし、5月の企業調査を見てみると、選考中辞退/内定辞退、採用重点層へのアプローチなど、様々な採用課題を抱えている企業が多いことがわかります。

山内は、この中でも最近は特に「学生の企業理解が浅い」「志望度が上げられていない」「理系学生の応募が少ない」といった課題感があげられると主張します。
ではこれらの採用課題を解決する上で、どのような手法を取っていくべきなのでしょうか?
山内はこれからの採用広報の考え方を2つあげています。

考え方①

これまでの採用広報では、母集団形成の時点では学生を「集め」、選考実施期になってから自社に合う学生を「選ぶ」という考え方が主流でした。しかし今現在の採用状況を踏まえて考えると、両時期において「選ばれる」ことを意識した採用が重要となってきています。母集団形成期・選考実施期ともに魅力付け、動機付けをすることにより、学生の意識を『育てる』採用手法が求められているのです。

考え方②

先述した、「誰に、何を、どう伝えるか」といった部分は、近年の採用の早期化・長期化・オンライン化を通して、「いつ、誰に、何を、どう伝えるか」、その中でも特に「いつ、誰に」の部分が重要となってきています。要するに、「時期・フェーズ」、「対象者属性」を細分化し、採用ツールを使っていかに丁寧なコミュニケーションができるかといった部分が、採用課題を解決するためのキーポイントとなっているのです。

フェーズによるセグメント例

ではここで、時期・フェーズによるセグメントの一例をみていきましょう。 例えば、「潜在層の採用重点ターゲット」には自社で働くことの魅力を認知させる必要がありますので、PUSHツール(WEB広告・DM)を活用し発見を促すことが求められます。「エントリ―済みの未接触者層」や「インターン、説明会参加者」にはMYPAGEやLINE等を活用し「限定コンテンツ」を発信することで、継続的に情報を提供し活動を促す施策が当てはまります。また、「インターン、説明会参加者」には複数のイベントを用意し誘導することで、動機付けを促すことが大切です。

第2部のまとめ

執筆者プロフィール

正井 優|株式会社ディスコ 企画クリエイティブ部

オレゴン大学ジャーナリズム学部卒業。
2019年のボストンキャリアフォーラムにてディスコに出会い、2020年9月に新卒で 入社。主に企業の採用広報ツールの制作を担当している。

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